生活習慣や癖の改善で出来る歯並びの予防③-大人も子供も

指しゃぶり、舌を出す癖、唇を噛む癖にしても奥歯が噛んでいても前歯が開いてきてしまうような開咬の状態になってしまうと、さらに次の問題が引き起こされます。

物を飲み込む時は普通、口を閉じて口の中を陰圧(いんあつ)という状態にしないと物を飲み込めません。しかし前歯が開いた状態(開咬)になると開いた部分を舌でふさがないと物を飲み込めないのです。前歯が開いているところに舌をまた挟むので、さらに前歯が開いていってしまうといった悪循環を引き起こしてしまうのです。

子供では成長途中のため症状が悪化しやすく、骨の成長方向にも影響が出てくる場合があります。そのまま成人になってしまうと骨がその状態で固まってしまい、治療は複雑になってきます。

成人でも唇を噛む癖、舌を出す癖がある方は診療をしていると多く見受けられます。
矯正治療をしていて最後になかなか前歯が閉じない事があるのですが、この癖が原因の場合がよくあります。そしてこのような癖があると装置を外した後にまた歯並びが悪くなっていってしまう事があります。

矯正治療をうまく進めるためにも、日常生活上の習慣や癖を意識的にコントロールしていく必要があります。また矯正治療後に後戻りをさせないためにもリテーナーをしっかり使用するとともにこの習癖のコントロールがとても大切になります。

生活習慣や癖の改善で出来る歯並びの予防②-大人も子供も

前回に引き続き、生活習慣や癖の改善でできる歯並びの予防というテーマの2回目です。歯並び・噛み合わせに影響が生じてしまうような生活習慣や癖にはどのようなものがあるでしょうか?

【舌を前に出す癖】
舌を前歯の間に挟んだり突き出す癖があると舌の押す力で前歯が上下とも出っ歯になったり、前歯が咬み合わなくなる開咬を生じたり、前歯に隙間が出てきます。発音にも影響が出てくる場合があります。
本人も無意識のうちにしており周りの人も気づきにくいことが多いです。奥歯を噛み合わせた状態で上下の前歯が咬み合わないようであれば既に開咬の状態です。早めの対処をお勧め致します。

【爪咬み】
爪を噛む癖が持続すると歯が摩耗したり、でこぼこが生じることがあります。
爪を噛む頻度や咬み方によって症状は異なってくると思われます。

【口呼吸】
鼻での呼吸(鼻呼吸)が困難になると、その代わりとして口を開けて息をするよう(個口呼吸)になります。鼻呼吸が困難になるような状況・病気としてはアデノイド、口蓋扁桃肥大、アレルギー性鼻炎、慢性副鼻腔炎、鼻中隔彎曲症などがあります。
口呼吸が持続すると前歯が出っ歯になったり、前歯が咬み合わない開咬になったり、上の歯並びの幅が狭くなります。とくに成長期では骨の成長方向や顔かたちにも影響してきます。
鼻の病気は歯並び・噛み合わせに影響を与える場合が多くあり、耳鼻科の受診もお勧めしております。

【寝ぞう】:睡眠態癖(すいみんたいへき)
睡眠中の姿勢がいつも同じ向きの場合など、顔の発育・歯並びの形態に影響を与える場合があります。とくに気をつけなければならないのがうつぶせ寝です。頭は人の体の中でも重いため、うつぶせ寝でいつも同じ方向を向いて寝ていると顔が歪んできたり、歯並びの形が左右非対称になってきたりする場合があります。
成人では骨の成長は終わっているため顔の歪みなどは生じないと思われますが、左右どちらかの歯並びが内側に倒れてしまったり、顔が圧迫されて歯ぐきの血流が悪くなり歯周病のリスクも高くなるという報告もあります。
いつも同じ方向を向いての睡眠姿勢は避けたほうが望ましいです。

生活習慣や癖の改善で出来る歯並びの予防①-大人も子供も

歯並び・噛み合わせに影響が生じてしまうような生活習慣や癖にはどのようなものがあるでしょうか?それらを日常生活で気をつけるだけでも歯並び・噛み合わせが悪くなることを予防・軽減できます。

【歯磨きの習慣】
乳歯が虫歯で歯の幅が少なくなったり、抜いたままにしておくと後に出てくる永久歯の生える場所が不足してでこぼこになります。
大人でも虫歯で歯を抜いてそのままにしておくと両脇の歯が倒れてきたり、歯の連続性が失われます。
まずは普段の歯磨きできちんと汚れを落とし虫歯にしない歯周病にしないことが歯並びの予防になります。

【指しゃぶり】
しゃぶり方によりますが、一般的に前歯が出っ歯(上顎前突)になったり、前歯が噛み合わなくなる(開咬)になるなどの症状が出てきます。
また指を吸うことで上の歯並びの幅が狭く(狭窄歯列)なり、狭くなることで下の噛み合わせと左右的なズレ(臼歯部交叉咬合)が生じる症状も出てきます。
3歳くらいまでの指しゃぶりは当たり前のことですが、3,4歳を過ぎてもまだしている場合は要注意です。

【唇を噛む癖】
主に舌くちびるを噛んだり、吸うことが多いです。
上の前歯に出っ歯や隙間を生じてきます。また下の前歯は内側に倒れてきたりでこぼこが生じてきます。
唇の赤い部分を越えてそのまわりが赤く腫れていたり、下唇だけが荒れているのですぐわかります。

私の発音は舌っ足らず?矯正治療とあわせて舌の癖の訓練も必要

舌っ足らずの発音を気にされている方はいらっしゃいませんか?
この舌っ足らずの発音が、噛み合わせや舌の位置、舌の癖などと関係していることがあります。
さて以前に舌の位置が良い位置にないと噛み合わせが悪くなることをお話しました。

では舌の良いといわれる位置=基本的なポジションはどこでしょうか?
通常、舌の先が上前歯の裏側で写真の斜線の部分あたりにあるのがよいとされています。

舌がいつも下の前歯を押してしまっているような低位舌(ていいぜつ)があると受け口の原因となりますし、
舌を上下前歯の間に挟んだり舌を出す癖(舌突出癖:ぜつとっしゅつへき)があると前歯が咬み合わない開咬(かいこう)という状態になります。

舌突出癖と舌癖による開咬:奥歯は噛んでいるが舌の力で前歯が開いてしまう状態

 

またこのような舌の癖があると噛み合わせだけでなく発音にも影響が出てきます。
「タチツテト」や「サシスセソ」がハッキリ発音しにくくなります。

よく言われる舌っ足らずのような発音です。

この舌っ足らずの発音を生まれつきのものと思っていらっしゃる患者さまが多いようですが、舌の位置や舌癖による噛み合わせ・歯並びの不正が原因であることがあります。

きれいな発音のためには噛み合わせ・歯並びの治療に加えて舌癖を治すトレーニング(筋機能訓練)もとても大切になります。

顎関節に調和した矯正治療

昨日今日と2日間ロス・ウイリアムススタディクラブの公開セミナーに参加してきました。世界的に権威のあるロナルド・ロス先生が40年に及ぶ臨床経験と研究活動から築き挙げられた矯正歯科治療の診断と治療システムに基づいて治療を行っている先生方のセミナーです。

顎関節に調和した歯並びと噛み合わせを重視した考え方に基づいた治療法でとても有意義でした。また単に噛み合わせや歯並びを治療するだけでなく美しい顔、美しいスマイル、長期の安定性についても重点をおいており、私の目標とするところの考え方と共通する部分が多くとても刺激になった2日間でした。

良いと思われるものはひとつでも多く取り入れ最善の治療を提供できるようにしていきたいと考えております。

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